公立中高一貫校開設のインパクト
一昔前ほどにはならないが、約20年前に通信添削大手のベネッセが首都圏で中学受験に関する広汎なアンケート調査を実施した。そして一昨年に、今度は対象地域を全国に広げて中学選択をテーマに公立中高一貫校受験と私立中学受験に関するアンケート調査を実施。この度、その速報が出た。
そこでこの両調査をまとめられた樋田大二郎青山学院大学教授にお話を伺いに行ってきたのだが、あれこれ興味深い知見は別の機会にご紹介することにして何よりも以下の事実が印象的だった。
すなわち、公立一貫校受験も対象にしたことで父親職業の多様化が明らかになった。約20年前は首都圏でかつ私立中受験対象だったということもあるが、高度専門職、管理職が大半だったのだが、今回は、事務、販売、自営業等、実に多様な父親の職業で中学受験をした割合が顕著に増大しているのだそうだ。
いかに公立中高一貫校の開設が社会的にインパクトの大きいものだったかがわかる。
そのうち詳報も出るそうなので、分析結果が楽しみだが、およそ何十倍という人気状況にもかかわらず、とりあえず公立中高一貫校受験がこれまでと違い社会的に深刻なテーマになっていないのはローリスクの故かもしれない。
もちろん、入試倍率が数十倍というのはハイリスクだが、その適性試験のための塾通いの負担が今のところ軽く、費用と労力をつぎ込まずにチャレンジすることができると思われているからだ。つまりローリスクなのである。その点、私立中学受験はハイリスクである。 ベネッセの調査でそうしたことが出てくるかどうか確認していないが、20年前に比べて明らかに異なるのは塾通いの長期化、投資額の増大、労力投下の大量化であろう。
『経済は感情で動く』(マッテオ・モッテルリーニ著/泉典子訳/紀伊国屋書店)にプロスペクト理論なるものが示されている。その一端をかいつまんで言えば、即ち、人は「勝ち」など主観的にプラスの方向に事態が動いていれば確実性志向になり、「負け」などマイナスの場面ではリスク追求型の行動をとるのだそうだ。確かに難関といわれる学校の平均的な合格率は偏差値で回避誘導してさえ25%くらいであり、かつてのそれは30%くらいであったように記憶してる。しかも、公立小6生の受験率は東京で37%(上記調査)と親世代の大学進学率に達している。引くに引けないという親の思いはこうして以前に増して強い事情下にある。
2008年7月15日
筆者 森上展安
2008年08月24日
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